月が傾いた夜に
独り善がりな愛は見透かされた。
十月の雨は僕らを冷たくするばかりで
そこに救いなんてなかったね。
窮屈な靴に押し込めた
臆病な私
何も刻まれなかった肌を
掻き毟った爪痕が赤く腫れ上がって
まるで出来の悪い悪夢みたい。
見たくもないので、死ぬまで踊るわ。
たとえばもし
ぼくがいなくなっても
きみはなんともないかおで
だれかに愛をささやけばいいよ。
ただ、月がきれいなよるは
ひとり、ぼくを想ってね。
目を瞑って
懺悔する間もなく
涙は渇いてしまうだろう。
名もない夜が来て
僕が狂ってしまう前に
赦して、なんて言わないから
どうか愛してくれないか。
届かない
傲慢な願いを
打ち消す雨音
空気は一層悲しさを増して
こんな夜に
逢いたい温もりさえ知らない。
祈るにはまだ
この指は拙くて
悲しい旋律に
溺れていくだけ。
こんな朝に
呼ぶ名前も知らない。
君だけに
秘密をあげよう。
いなくなる僕を想って
優しいあの人が悲しまないように。
愛してる。
ずっと愛してるよ。
遠くから呼ぶ声が
悲しく響いて僕に届く。
ごめんね。
こんな寒い夜に
君の指さえもう温めてあげられない。
干からびた咽喉からは
もう息すら出ないけど。
君を傷付けるためだけに
口付けをした。
残ったのは
空っぽの部屋と
腫れ上がった恋と。
からっぽの胃に
愛の歌を詰め込めば
心は満たされるかな。
震える背中を
優しく撫でるのは
さっき花を摘んだ手。
いつか僕を散らすものだと
知っていたよ。
涙が止まらない
星の綺麗な夜に
繋いだ手の温かさを
今でもそっと想い出すよ。
ひとりでうまく泣けなくなったのは
冷えてしまった指先のせい。
誰にも合わせない
誰も追いつけない
自分だけの歩幅で歩く
あなたの速さが好きでした。
名前を呼ばない声に
苛立つ足音
手を伸ばさないのは
その爪が
嫉妬で歪んでいるから
僕と同じだね。
祈ることを止めた指で
優しく髪を撫でる。
それだけで恋に落ちることを
君は知らないね。
理解して欲しいわけじゃない。
ただ、静かに崩れていく私を
優しいその瞳に
映してほしいだけ。
結局分かり合えなかった
君の涙と僕の指先
それでも僕は待ってるよ
いつかの夢の続きを
まどろみに酔いながら
静かに死んでゆく
光の咲いた庭で。
忘れないと、願ったことすら
君は忘れていくんだろう。
そして、君が誰かに忘れられたとき
やっと想い出すんだね。
僕を覆い隠したあなたの爪には
いつも光が宿っていた。
その指先が、優しく触れて
僕の輪郭を正してくれる。
いつになったら僕は
あなたと一つになれるんだろう。
緩やかに死んでゆく
想い出と心臓
褪せてゆく景色を
美しいと思う
この瞳はもう壊れてる。
鮮やかなのは
網膜に残る夢の残像
穏やかに笑う君に
どうか永遠を刻みたい。
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